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agrizm No.35 からふるファームさん

美方郡香美町で香住梨や夏野菜を中心に栽培し、ドライフード商品などの加工品を製造・販売を行っている『からふるファーム』の吉川さんご夫婦。

代々続く梨農家だった康治さんは3年前、後を継いだ。田んぼだった場所を畑へ転換し、安心して口にできる商品を届けたいとの想いで化学肥料を使わず自然農法で栽培。有機石灰の1つであるカキ殻やカニ殻を使い、土壌を整えている。他にも、農薬を使用せずとも害虫を寄せ付けず成長を促す栽培や落花生とトマト、とうもろこしと枝豆など、相性の良い植物同士が互いに助け合って生育するコンパニオンプランツを活用した野菜が多く並んでいる。

「本に書いてあるからと試してみても上手くいかないことがある。実際やってみないとわからない。失敗したのもあるよ!たとえ組み合わせが良くとも、その土壌に合うか先ずは実験、成長過程をみていく必要があると話してくれた。

加工品にも力を入れており、低温でじっくりと乾燥させるドライフルーツやドライベジタブルは歯応えもしっかり残り、みずみずしさをそのままに楽しめるとリピーター続出。梨はあっという間に売り切れてしまった。また、アイガモ農法で育てられたお米が精米時に割れてしまい売れなくなった屑米を米粉へと加工し、新たな商品として販売している。

「自分たちだけじゃなく地元の人たちと一緒に農業を続けていける仕組みや環境にも配慮した持続可能な農業を目指したい。」

彩り豊かなこの地域を守り繋ぐため、まさにコンパニオンローカルな挑戦をし続けている。

agrizm No.34 てらだ農園さん

豊岡市出石町で自然栽培でお米や大豆を作り、加工・販売をしているてらだ農園の寺田まさふみさん。

今ではネットで検索すれば有機農業についてのノウハウがずらりと出てくる時代だが、寺田さんが始めた頃は違った。農業大学校を卒業後、海外で2年間の農業実習を経験し、兼業農家だった父の後を継いだ。環境にも配慮した安心で安全な食品を作りたいと、肥料や農薬に頼らず自然農法でお米を栽培。その間、失敗や苦労もあったという。30年前の記録的冷夏により米不足となった年、同じく寺田さんの農園も大不作となった。さらに翌年も干魃の影響により、自然の中で為すすべもなく、田畑には売るものがなくなる自体を経験した。それでも「やるしかない」と自身を奮い立たせた。知識と経験を活かし有機栽培を初めて36年、6次産業化にも力を入れている。遺伝子組み換え商品に危惧の念を抱き、納豆を一から作っている。自家製栽培の大豆を使用し、大粒で食べ応えのある「寺ちゃん納豆」は人気商品に。さらに、栽培が難しく一度は消えた幻の酒米「但馬強力」を此の友酒造さんと協力し復活させたのだ。

また、オーガニック給食に取り組むこども園にお米を納入する縁で子ども達に食の安全や環境のことなどを楽しく伝える活動も行なっている。「最近息子が農業を始めて、心配もあるが嬉しい」と話す寺田さん。息子さん目線でアップされているインスタグラム「@terada_farm」は、どの写真も温かく農園の雰囲気が伝わってくるものばかりだ。

寺田さんの愛する農業が、また親から子へと確実に引き継がれようとしている。

agrizm No.33 ありがとんぼ農園さん

朝来市和田山町でお米や大豆を栽培し、餅・味噌の加工販売をしている「ありがとんぼ農園」の岡村康平さん。化学肥料や農薬を使わず自然の力を借りて育てている。
「できちゃった農法って言うてるんやけどね」と笑いながら話す康平さん。農薬を使わないと雑草は生え、肥料を使わずしてしっかりと育つのか?と疑問になった。康平さん曰く「自然豊かな、この地域の土壌と水があれば美味しい作物は育つ」と。しかし、豊かな山々も放置されたままでは、大雨による洪水や渇水が発生しやすくなり水が濁る。そこで、水質を整えるため、山仕事を始めた。山を整備すれば栄養たっぷりの美しい水が田んぼへ流れ込む。木々が生茂り、太陽の光が入らず放置されていた山の間伐をする事で土砂の流出や崩壊を防ぐ取り組みを行っている。だから林業にも力を入れているのだ。間伐した木は、しいたけの原木として使用したり、味噌作りをする時や餅米を蒸す工程で薪を使用したりと、無駄な事は何もない。まさに大地の恵みを最大限に活用した農法ではないだろうか。『できちゃった農法』とは、まず根底にある豊かな大地を守り、育むことから始まっているのだ。
栄養たっぷりに育てられ加工された商品は、道の駅まほろばで購入できる他、直接購入することもできる。
康平さんが育てるお米で作られた、どぶろくも販売している。『ほうすけらっぱ』という一度聞いたら忘れない面白いネーミングセンスも素敵だ。
農業は、平日の朝から夕方までと決め、土日は子ども達との時間を大切にしている。「野球をしたり、ご飯を作ったり。最近は、子ども達が薪割りを手伝ってくれる。」と話してくれた。自然にも子ども達にも全力で愛情を注ぐ康平さんの更なる活躍に目が離せない。

agrizm No.32 佐藤商店さん

朝来市山東町で『アイガモ農法』と『コウノトリ育む農法』で美味しいお米とお餅を作っている佐藤商店の佐藤三智男さんと奥様の哲子さん。

毎年、450〜500羽のアイガモのヒナを田んぼへ放し、農薬や除草剤を使用せずお米を栽培している。ヒナは、稲と共に成長し、水田を泳ぎ回る事で雑草を取り、害虫を食す。また、水田を掻き回すことで酸素補給や水温上昇がおこり、逞しい稲に育ててくれる。アイガモは臆病な性格のため、外敵がいると大きく見せようと集団行動を行いミステリーサークルのような渦を作り稲を倒してしまうことがある。散歩中の犬や人でも怯えることがあるという。水田を泳ぐ姿は可愛い光景だが、騒がずそっと見守ることが必要なのだ。

稲穂が実る頃になると、お米を食べてしまわないよう田んぼから引き上げる。このアイガモ米は安全で安心していただけるとあってリピーターも多い。

佐藤商店さんがお餅の加工を始めて今年で7年目。近所の奥様達と一緒に手作業で丁寧に作られている。化学調味料や保存料を一切使わない無添加だから安心して食べられる。道の駅で購入した方が、パッケージに記載の住所を見て佐藤商店さんの自宅へ来てくれることもあるという。「美味しいと言って直接買いに来てくれたのは嬉しい。」と笑顔で話す三智男さん。

佐藤商店さんのお米と「みっちゃんのこだわり餅」は道の駅やふるさと納税で購入できる他、直接販売も行っている。

お正月やお祝い事には欠かせないお餅。焼き餅やお雑煮など、お餅が美味しい季節が近づき、一段と忙しさを増している佐藤商店さん。それでもご夫婦は、手を抜くことなく、これからも自然と環境に配慮した農法で、美味しいだけでなく安全で安心して食べられるよう愛情と感謝を込めてつくられている。

agrizm No.31 綾彩 あやや

綾部市有岡町で新規就農し、万願寺とうがらしとえび芋を栽培している綾彩の隆太朗さん。以前は、広島で花の苗を栽培する仕事に携わっていたこともあり、花が好きでいずれは花の栽培も再開したいという。「自分は飽き性だけど農業に関しては一度も辛いとか辞めたいと思ったことがない。天職だと思っている」という隆太朗さんは本当に楽しそうだ。ハウスが3棟あり、今シーズンの万願寺とうがらしの収量は約6トンほどになった。

農家としての収入も確保しながらいろんなことにチャレンジして行きたいという。その一つが「アクアポニックス」聞きなれない言葉だが、SDGsやサスティナブルといった地球環境を崩すことなく自然に配慮した取り組みが進む中、今世界で注目されている農業だ。水中で野菜を栽培しながら魚も養殖する。魚のフンが水中のバクテリアによって栄養素に分解され植物が育つ。また、育つ野菜は、ろ過の役割を果たし浄化され、水質も保たれるという。尚且つ、養殖した魚も出荷できるのだ。しかし、そんな簡単な話ではないという。設備投資が必要なこともあり、まずはしっかりとした軸を持つため、来期は栽培拡大に向け、もう一棟ハウスを増やす予定だ。

また、今年は落花生の栽培にも挑戦した。日本で販売されている落花生のほとんどが乾燥された輸入品、生で国産というのは出回る数も少ないため高級品だ。落花生は、土の中で育つため収穫後、網目にびっしりと付いた泥を落とす作業に追われる。「専門農家なら機械で洗えるが手作業のため大変だった」という。

今後も、万願寺とうがらしでしっかりとした収入が得られる自信を持ち、次は何ができるか、どうすれば効率よく栽培できるだろうかと考え、実行しようと奮闘している隆太朗さん。その姿は、遥か先を見据えているようだった。今後の活躍が楽しみだ。

agrizm No.30 由良オリーブを育てる会さん

宮津市由良でオリーブを栽培している「由良オリーブを育てる会」の会長を務める藤本徳雄さんにお話をうかがった。
近年、高齢化が進み耕作放棄地が増えてきたため、有効活用できないかと平成25年、宮津市の働きかけによってオリーブ栽培を始めた。温暖な気候で育つイメージがあるオリーブ、日本海側では初の試みだったという。現在、会員は40代から80代までの15名が所属し、農園も徐々に増え今では7ヶ所、約2千本のオリーブを育てている。
広報を担当しているのは、会長の奥様 早苗さんでインスタグラムやツイッターなどでオリーブ園の風景やイベント情報を発信している。
昨年は、花粉が飛ぶ時期と6月の長雨が重なり、更には裏年だったこともあり、今までにないほど不作の年だった。しかし今年は、雨の降るタイミングが良く豊作だ。「気候や年によって収穫量が変わってくる。大変なこともあるけど成長していくオリーブは子供のようにかわいい」と早苗さんは話す。
商品開発や梱包作業などは、所属している会員の奥様たちによる『女性会』がおこなっているという。オリーブの葉っぱには、ポリフェノールが豊富で捨てるのはもったいないと商品化をすすめた。そこで完成したのがオリーブ茶と手焼きおせんべい。メンバー達は、由良オリーブの魅力を余す事なく楽しんでほしいと取り組んでいる。ブランド力を高めるため、オリジナルロゴも作った。環境や農業の未来、地域活性化のため、こだわりを持ちながらも楽しく取り組む事で多くのアイデアが生まれていく。
由良オリーブを育てる会では、毎月第4土曜日にイベントを行っており、次回の11月24日は、収穫祭も同時開催予定だ。最新情報は公式インスタグラムでお知らせする。

agrizm No.29 吉田農場さん

朝来市和田山町にある自然豊かな場所、約40ヘクタールと広範囲の水田で美味しいお米をつくっている吉田農場の吉田和之さん。実家が代々農家だったこともあり、いずれは後を継ぐため農業高校で勉強。卒業後は、父の元で就農した。米づくりのノウハウを教わり5年程たった頃、父を亡くし、若くして後を継ぐこととなった。

「こんなに早くとは思っていなかった。まだまだこれからいろんな事を教わっていこうと思っていた矢先の事だったので大変でした。」と話す和之さん。それでも従業員の方達と共に、こだわりの米づくりを続けてきた。その一つが「ひょうご安心ブランド」の認定を受けていること。子どもも大人も安心して美味しく食べてもらえるようにと厳しい基準を守り栽培している。もちろん味も一級品。どんな料理にも合う『ひのひかり』、甘くもっちりとした『こしひかり』、その他、もち米や酒米も栽培している。酒米は地元の老舗酒造 田治米合名会社の『竹泉雄町』に使われている。また、養父市にある奥様の実家のパン工場 ピーターパンでは、竹泉雄町の酒かすとお米粉を使用した無添加の『酒かすスフレ』を開発し、受注販売を行なっている。こうした地元の繋がりや家族の繋がりによって商品は生まれ、愛されているのだ。

今年は、ゲリラ豪雨に見舞われる事もあったが、穂をつけるタイミングが良かったため、お米の出来も上々という。日々変化する気候により、毎年同じようには行かないのが農業。しかし、その分やりがいも感じている。

「来年は息子が農業大学を卒業して帰ってくるので、親子で頑張っていきたい」と話す和之さんは嬉しそうだ。

吉田農場さんの新米は、道の駅 但馬のまほろばで販売している。また、公式ホームページからも購入できる。

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agrizm No.28 遠坂きのこ農園さん

朝来市で国産きくらげを栽培している遠坂きのこ農園の木下さんご夫婦。標高370mの澄んだ空気と天然水が湧く場所で農薬を使わず丁寧に育てている。

きくらげは、栄養価が高くビタミンDや食物繊維なども豊富で、近年では、美容と健康に良い食材としてメディアなどでも紹介されている。しかし、日本で栽培されている国産きくらげは5%程度と、国内流通は極めて少ない。スーパーなどで売られているのは殆どが外国産。それだけに無農薬の国産きくらげが食べられるのは嬉しい。

幸一さんは元鉄道の運転手。のどかな田園風景が広がる景色の中、毎日電車を走らせていた。そんな風景の中、飛び込んできたのが農薬散布。『毎日食べている米や野菜の中に、どのくらいの農薬が使われているのか?子ども達が口にしても平気なのか。健康被害はないのだろうか?』と疑問を抱くようになり、安心して食べられる食材を自分で作ろうと転職を決意した。きくらげを栽培する上で大変なのが、ハウス内の温度・湿度管理の徹底。竹田城とほぼ同じ標高にあるため、冬は冷え込む。また、雑菌が入らないよう衛生面にも気を配らなければならない。過去には、朝食に納豆を食べた事で、きくらげが全滅してしまったこともあった。 それでも、もう一度一から栽培して順調に育ち、会社も軌道に乗り始めた頃、幸一さんが脳梗塞で倒れてしまったという。退院後、リハビリを重ね復帰。「大変だったけど、お客さんから美味しかったという声を聞くと嬉しい。諦めることなく栽培を続けてよかった。」と、ご夫婦が笑顔で話してくれた。遠坂きのこ農園さんの商品は、福知山・綾部・舞鶴の三ツ丸ストアと業務スーパーで販売しているほか、直接、農園に行って購入する事もできる。