豊岡市出石町で自然栽培でお米や大豆を作り、加工・販売をしているてらだ農園の寺田まさふみさん。
今ではネットで検索すれば有機農業についてのノウハウがずらりと出てくる時代だが、寺田さんが始めた頃は違った。農業大学校を卒業後、海外で2年間の農業実習を経験し、兼業農家だった父の後を継いだ。環境にも配慮した安心で安全な食品を作りたいと、肥料や農薬に頼らず自然農法でお米を栽培。その間、失敗や苦労もあったという。30年前の記録的冷夏により米不足となった年、同じく寺田さんの農園も大不作となった。さらに翌年も干魃の影響により、自然の中で為すすべもなく、田畑には売るものがなくなる自体を経験した。それでも「やるしかない」と自身を奮い立たせた。知識と経験を活かし有機栽培を初めて36年、6次産業化にも力を入れている。遺伝子組み換え商品に危惧の念を抱き、納豆を一から作っている。自家製栽培の大豆を使用し、大粒で食べ応えのある「寺ちゃん納豆」は人気商品に。さらに、栽培が難しく一度は消えた幻の酒米「但馬強力」を此の友酒造さんと協力し復活させたのだ。
また、オーガニック給食に取り組むこども園にお米を納入する縁で子ども達に食の安全や環境のことなどを楽しく伝える活動も行なっている。「最近息子が農業を始めて、心配もあるが嬉しい」と話す寺田さん。息子さん目線でアップされているインスタグラム「@terada_farm」は、どの写真も温かく農園の雰囲気が伝わってくるものばかりだ。
寺田さんの愛する農業が、また親から子へと確実に引き継がれようとしている。